2012/06/28
八景島シーパラダイスのホンソメワケベラさんはお掃除屋さんだよ 【ファイルC247】2012.06.28
【ファイルC247】2012.06.28 八景島シーパラダイスのホンソメワケベラさんはお掃除屋さんだよ
つんつくゴミや寄生虫をお掃除しています。
八景島シーパラダイスのホンソメワケベラさんに会いに行きました。 こんにちは。
そうしたらば、大きなお魚さんに追っかけられていました。
うへえ、食べられちゃうよお!
と思ったら、ホンソメワケベラさんは大きなお魚さんの体をつんつく。
寄生虫をお掃除してあげているんだね。
食べるために追っかけてるんじゃなくて、『ちょっとちょっと、お掃除してよお』ってお願いしていたんですね。
頼まれたらお掃除しないわけにはいきません。
こっちも頼んだよ。はいは~い。
つんつくつんつく。
よっぽど気持ちが良いのか、お魚さんヒレを開いて喜んでいるねえ。
お魚さんも身体をお掃除してもらって、ホンソメワケベラさんもご馳走にありつけるから、どちらもお得なんだね。
ところで、『ホンソメワケベラ(ほんそめわけべら)』さんって変な名前だねえ。
私は上方落語の天才、故4代目 林家 小染(はやしや こそめ)師匠が好きだったけれど、コンソメスープにも似ているねえ。妖艶な姿は妖怪人間ベラさんを連想させるし…。
実はこの名前、書き間違えから出来た名前です。
ホンソメワケベラさんに似たお魚に、体の前部と後部が黒褐色と黄色の2色に『染め分け』られている『ソメワケベラ(英名Bicolor cleaner wrasse』という近縁種がいるのです。
それで、この『ソメワケベラ(染め分けベラ=染分倍良)』さんより、体が『細い』ので、当初は『細染め分けベラ=細染分倍良=ホソソメワケベラ=ほそそめわけべら』と名付けられたのです。
ところがそそっかしい人がいて、『ホソ(ほそ)』というカタカナを『ホン(ほん)』という字と間違って、それがいつのまにか定着して『ホンソメワケベラ(本染分倍良)』となってしまったんだって。
迷惑な話だねえ。
ホンソメワケベラ(本染分倍良、学名:Labroides dimidiatus)さんは、硬骨魚綱、スズキ目、ベラ科、ソメワケベラ属に属する魚です。
体長は12cmほどで、雄のほうが雌より大きいのです。
背と腹は白いのですが、体側面には目を通って尾鰭(おびれ)まで黒の一本線が走り、後方ほど黒色部が太くなります。
尾鰭はほぼ黒いのですが上下の縁が青白い色をしています。また、臀鰭(しりびれ)と背鰭(せびれ)にも黒色のラインが入っています。
お住まいは、太平洋とインド洋の熱帯・亜熱帯の海です。
日本でも房総半島以南の南日本に分布していますが、夏には暖流に乗って北上した個体が東北地方や北陸地方の海岸でも見られます。ただしこれらの個体は、冬には低温のため大部分が死んでしまう"死滅回遊魚"と考えられているそうです。
サンゴ礁や岩礁の周辺に生息し、頭を斜めに下げ、波打つような軌道の独特な泳ぎ方をします。
この特徴的な泳ぎと体色で、自分のお掃除屋さんとしての存在を他の魚に誇示していると考えられています。
ニセクロスジギンポやクロスジギンポも本種によく似ているのですが、泳ぎ方が違うため見分けるのは容易なのだそうです。
先ほどの写真のように、他の魚はホンソメワケベラを発見すると近寄っていきます。
ホンソメワケベラさんはその魚の回りを泳ぎながら、ウミクワガタを主体に体表に食いついている寄生虫を捕食します。
時にはえらの中や口の中にも入りこみ、食べかすなどを食べてまわりますが、魚たちは掃除がしやすいように、口や鰓蓋を大きく開けて協力します。
掃除してもらう魚は、チョウチョウウオ、ヒメジ類などの小型魚からギンガメアジなどのアジ類、クエ、マハタ、ユカタハタなどの大型ハタ類まで、サンゴ礁にすむ魚のほとんどを占めます。
この中には魚食性の強い魚も数多く含まれるのですが、この魚たちは自分の体をきれいに掃除してくれるホンソメワケベラを捕食することはまずありません。
ホンソメワケベラの他にも近縁種のソメワケベラ、エビの仲間のアカシマシラヒゲエビ(アカスジモエビ)、オトヒメエビなどがこのような掃除行動をする動物として知られています。
産卵期は夏で、オスとメスが並んで水面近くまで泳いでいき、すばやく身を翻す瞬間に産卵・放精をおこなって海底に戻ります。卵は分離浮性卵で、一粒ずつ離れて海中を漂いながら発生します。
それで、ホンソメワケベラさんは、お掃除してくれるので、他の肉食魚から食べられないということですが、逆にホンソメワケベラさんにそっくり変装すれば、自分の身を守れることができるんだねえ。
そう考えたお魚に、スズキ目イソギンポ科のニセクロスジギンポさんがいます。
あったま良い!
この人はホンソメワケベラとは全く別の仲間に分類される魚なのですが、ホンソメワケベラとよく似た体色をもち、泳ぎ方も似せているのです。
一種の擬態ですね。
ですから、他の魚はホンソメワケベラさんと間違って『お掃除してちょうだいよお!』って近寄るのですが、この魚は寄生虫どころか、皮膚や鰓を鋭い歯で食いちぎってすばやく逃げてしまうのです。
うへえ!
ただ、自分の身を守るために、ちゃっかり人のマネっこするだけならまだしも、人の体を食い逃げするなんて酷いねえ。
それで、ニセクロスジギンポさんは、英語では"False cleanerfish (ニセ掃除魚)"と呼ばれているのです。
ひょっとしたら、この『ホンソメワケベラ(本染分倍良)』さんという名前は、『ニセソメワケベラ(偽染分倍良)』さんであるところの『ニセクロスジギンポ』さんじゃなくて、本物だから、元々は『ホソソメワケベラ(細染分倍良)』だけど、「『ホンソメワケベラ(本染分倍良)』で良いや」ってことになったのかもしれませんね。
そうとは知らず、本物のホンソメワケベラさんは、いろんな人からお掃除を頼まれて大忙しの大繁盛です。
つんつくつんつく
よかったねえ。素敵なエステティシャンだねえ。
やっぱり正直がなによりです。商売は信用だからねえ。
さようなら、元気でね。
ということで、今回はみんなから感謝されているお掃除屋さんのホンソメワケベラさんでした。