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日本のX線自由電子レーザー(XFEL)は夢の装置。 【ファイルSI 01】 2011.09.17 

【ファイルSI 01】 2011.09.17 日本のX線自由電子レーザー(XFEL)は夢の装置。

その名もSACLA(サクラ)!世界の注目の的だねえ

 東日本大震災や、長引くデフレで日本は元気がありません。

 でも思い出してください。小柴博士のスーパーカミオカンデはニュートリノ物理学では世界の最先端の装置です。ノーベル賞級の実験成果が次々と達成されています。小惑星イトカワを探査し、地球に帰還した『はやぶさ』は宇宙探査史上特筆されるべき快挙です。
 iPS細胞の研究で山中伸弥教授がノーベル賞を受賞するのも時間の問題です。

 そして、新たに、日本の科学技術が世界にその実力を示す壮大な施設が注目を浴びています。

それはX線自由電子レーザー(XFEL=X-ray Free Electron Laser)!


 世界が注目する、実験の舞台は兵庫県の播磨科学公園都市内にあります。

 


 

 下の地図のAの印がXFELのある場所です。

 


 

 独立行政法人 理化学研究所 播磨研究所 SACLA X線自由電子レーザーHPより。
http://xfel.riken.jp/xfel/index.html
 〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1 独立行政法人 理化学研究所 播磨研究所 X線自由電子レーザー

 上の写真の右側のリング状に見えるのが世界一の性能を誇る大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト=Super Photon ring-8)で、直径は約450m、1周約1.5kmです。

 左側の細長い施設がX線自由電子レーザー(XFEL)で全長は約700mです。XFEL施設はSPring-8と同じキャンパス内に隣接する形で建設されます。

 この施設は、SPring-8と同様、電子を80億電子ボルト(8GeV)まで加速し、最短波長0.06 nm(ナノメートル)のX線レーザー発振を目指しています。波長0.1 nm近辺での明るさはSPring-8と比べて10億倍に達します。XFELを発生させる装置群は、固い岩盤に支持されたコンクリート製のトンネル内に、非常に高い精度で設置されます。

 ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 6月13日(月)14時27分配信
の記事ではこう紹介されています。
 
※※  ※

 世界最短波長のX線レーザー発振に成功

 日本の理化学研究所と高輝度光科学研究センターは、X線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」で、世界一短い波長のX線レーザーを発振することに成功した。

 SACLAは、第3期科学技術基本計画の国家基幹技術の一つとして5年がかりで開発され、2月末にビーム運転を開始していた。今回、発振に成功したX線レーザーは、波長が1.2オングストローム(1オングストロームは1億分の1センチ)。X線自由電子レーザー施設の完成は米国のXFEL施設に先を越されたが、2009年4月に同施設が発生させた1.5オングストロームの最短波長記録を追い抜いた。

 X線自由電子レーザーは、1000万分の1センチより小さな世界をフェムト(千兆分の1)秒で観察可能なことから、膜タンパク質の構造解析や、触媒が化学反応でどのような働きをしているかなど、従来のX線解析では困難あるいは不可能だった原子や分子の世界の「機能」を直接観察する新しい強力な道具になると期待されている。

 理化学研究所と高輝度光科学研究センターでは、今後、調整運転を行い、今年度内に国内外に開かれた施設として供用運転を開始するとしている。
 
※※  ※

手っ取り早く言えば、超高解像度・超高速度連続撮影顕微鏡なのです。


 皆さんはレントゲン撮影をご存じでしょう。

 レントゲンに使われるX線という光は、物質の中をすり抜けて内部まで届く力を持っています。だから、レントゲン写真で身体の内部を見ることによって、患部を観察できるのですね。

 一方、レーザーという言葉も聞いたことがおありでしょう。
 光の波がきれいに揃っているという特徴を持った光のことを指し、身近なところでは、CDやDVD,光ファイバーなどで使われています。歯医者さんでは普通にレーザー治療が行われていますよね。

 つまり、物質の中を透過するというX線の波を、綺麗に揃えようというのがX線レーザーなのです。

 波が綺麗に揃うということは、それだけ細かいものを観ることができるということです、

 X線自由電子レーザー(XFEL)が作り出す光は、下図で示すように放射光(強力なX線)とレーザー(波の揃った高品質な光)の両方の特長をもった光です。

 



 しかしながら、X線領域のレーザーは、原理的な問題からこれまで実現不可能と考えられていました。

 ところが1990年代、新たな発想と技術的な進歩も相まってXFELの実現性が急速に高まり、現在、日米欧が争う国際的な開発競争になっているのです

 

X線自由電子レーザー(XFEL)の発生原理はこのようになっています。


 


 

 X線自由電子レーザー(XFEL)を生み出す源は、ほぼ光速まで加速された電子の集まりです。 XFELを発生させるための重要な装置として、電子銃・加速管・アンジュレータという3つの装置があります。

(1) 電子銃
 電子を発生させる装置です。XFELには指向性の強い(バラバラでなく同じ方向に進む)電子ビームが必要なため、新たに特別な電子銃を開発しました。

 真空中で約1500℃まで加熱すると合金の結晶から電子が飛び出します。 ちなみに最近は液晶テレビ等に押され気味ですが、従来タイプのテレビのブラウン管にも電子銃が使われています。

(2) 加速管
 電子をほぼ光速(光速の99.9999%)まで加速する装置です。 加速管には、短い距離で効率的に電子を加速することが求められます。 なぜなら電子を効率よく加速することができれば、加速管の数から建物の長さに至るまで、コストを大幅に節約することができるからです。

 XFELでは従来の2倍の加速性能を持つ加速管の開発に成功したおかげで、加速器部分の長さが半分で済み、コスト削減に大きく貢献しています。

(3) アンジュレータ
 磁石を多数並べ電子を蛇行させて光を放出させる装置です。

 電子は蛇行するたびに放射光を発生し、光と相互作用します。 すると徐々に光の波(山と山、谷と谷)が整列し、増幅され、レーザー発振に至ります。 SPring-8で開発されてきた真空封止アンジュレータにより、低いエネルギーでもX線領域のレーザー発振を可能にし、大幅なコストダウンに貢献しています。 電子はレーザー光が得られた後は不要になるので、磁石で方向を変えて停止させます。

 しかしながら、X線自由電子レーザー(XFEL)は、ただ単に細かくものが見える(原子レベルで物を見る)だけではありません。

X線自由電子レーザー(XFEL)はフェムト秒(1000兆分の1秒)単位という短い時間の変化を観察することが出来るのです。


 たとえて言えば、1000兆分の1秒の超高速ストロボの連続写真でものの変化を観察ですることができるのです。


じゃあ、物を細かく超高速で見えれば、どのような良いことがあるの?


① 治す
 X線自由電子レーザー(XFEL)を使うと、人をかたちづくっているタンパク質がそのまま観察でき、細胞の中でおこる動きまでがわかるようになります。
 
 そもそも、タンパク質の変化はとても反応速度が速いので、超高速で観察できなければ、詳細な仕組みが分からなかったのです。

 また、今日市販されている薬の60%以上が膜タンパク質に作用する物質であることから、膜タンパク質の解析が新薬開発の成否を握っています。

 タンパク質の構造を調べる代表的な方法として、タンパク質を結晶化しSPring-8などの放射光(強力なX線)が使われています。 しかし膜タンパク質は結晶化が極めて難しく、構造を解明し機能を理解するまでに数年から10年以上かかったり、結晶化ができないために解析そのものが不可能であったりするために、新薬開発が遅々として進まないというのが現状です。

 ところがXFELは、光の波が揃っている上にSPring-8の10億倍も明るいため、結晶化が不要でタンパク質1分子があれば構造が解析できると考えられています。

 アルツハイマー病やエイズのような難病はもちろん、脳がかかわる心の病気の解明にも役立ち、早期診断治療が可能になるかもしれません。
 
 また、副作用の少ない、人に優しい新薬の開発に役立つことも期待されています。

② 創る
 温度やpH(酸性⇔アルカリ性を表す)の変化は、物質の性質(=物性)も変化させます。 紫外線などに代表される光も、温度やpHと同様に物性を変化させます。

 SPring-8とXFELが同一キャンパスに存在するメリットを活かせば、非常に強いXFELの光を様々な材料に照射して、その物性が変化する様子を、SPring-8からの放射光を使って観察するという実験が考えられます。 これにより現在知られていない、全く新しい性質をもった材料の研究が進むでしょう。

③ 守る
 X線自由電子レーザー(XFEL)でナノの世界を詳細に観察することにより、快適な生活に役立つ機能を持った素材が生み出されるかもしれません。

 また、空気中にある悪いものだけを吸収するしくみを観察し、そのナゾが解明できれば、有害物質のない安全でいきいきとした社会が実現するでしょう。

 XFELは非常に短い時間で起こる現象を観察できます。 そのため、現在の科学では「反応前」と「反応後」しか観察できない反応も、「反応中」の物質を直接観察できると考えられています。

 例えば、現在地球上には6億台以上の自動車が存在しますが、そこから排出される排気ガスは膨大な量になり、大気汚染の要因になっています。

 自動車には廃棄ガスを浄化するために触媒がついていますが、XFELを用いて触媒がどのように排気ガスを浄化しているのかを直接観察できれば、まったく新しいアプローチから触媒の開発が可能になると考えられます。 その結果、環境問題にも貢献できることでしょう。

 ④ 知る
 これまでにない強力なプラズマを作ることで、太陽など星の内部で起こっているナゾが解明できるかもしれません。XFELは、宇宙のナゾにも迫ります。

 ⑤ 変える
 もっとも効率的に太陽エネルギーを活用している植物。
X線自由電子レーザー(XFEL)によって植物の光合成の様子をくわしく観察し、さらにその太陽のエネルギーを利用する機能をまねることができれば、高効率な太陽光エネルギーの利用が達成できるかも知れません。

 XFELは実験の検証を繰り返し、今年度中(来年春3月まで)に運用研究課題を公募し、実験開始する予定です。


 いままで、世界にはこのような装置は存在しなかったので、人類が今まで知り得なかった知見が続々発見されるでしょう。

 今後、日本発のノーベル賞ラッシュが始まることは間違いありません。

 




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コメント

No title

お立ち寄りありがとうございます。
スプリング8は年一回の一般公開の時に 見学に行きます。
X線自由電子レーザー(XFEL)の建物が工事中の時は どんなものができるのだろうと思いました。

No title

眼とろん星人スジャータさん、2度読ませていただきましたが、こういう内容の記事、なぜか私の頭には良く入りません。
私があっと思った1点は、<治す>という段の「アルツハイマーやエイズの難病はもちろん、脳がかかわる心の病気の解明にも役立ち、早期診断治療が可能になるかもしれません」という一説です。

この頃、私も物忘れが激しく、アルツハイマーという病名を貰った主人にひけをとらないぐらい、色々忘れます。
この私の状態は、一体病気なのかどうか、きちんと調べてもらえる物があったら、それだけでも随分気が楽になるような気がします。
<X線自由電子レーザー装置>が、1日も早く実用化される日を待つばかりです。
誠に個人的なことをコメントして申し訳ありません。

No title

べてぃさんこんにちは。
実際に見学に行かれているのですね。
世界最先端の施設を!
スプリング8だけでも凄いのに、X線自由電子レーザーが併設されるのが世界一の施設の秘密ですよね。
とても羨ましいと思いましたよ。

No title

トマトさん、2回もお読みいただいてありがとうございます。
要は、世界一の超高解像度・超高速度連続撮影顕微鏡が日本に出来て、それで何が出来るかということさえ理解していただければそれで十分だと思います。

そうなんですよね。アルツハイマー病はまだ、分子、原子レベルの反応が解明されていないので、実験でどういう物質が薬効があるか分析して、その成分を薬にしている段階らしいのです。
これが、どういった物質がどの部分に具体的にどう効くかミクロレベルで正確に分かれば、副作用を抑えた病巣にピンポイントに効く薬が開発される可能性が出てきます。

とっても期待が持てる発明ですね。私も素晴らしい成果が出ることを待っていますよ。

No title

アタシもここ見学に行きました。うちの近くなんですよ!ただ、ここ使いこなせてないっていう感じもしたんだけど、どうなんだろう??
どうしても、つくばとかに集まってしまってる感じがして・・・スプリング8周辺の現代建築も好きでかなり頻繁にこの周辺に行くんだけどね・・・ただ、確かに研究者さんたちが集まってるのは事実で隣の市のラーメン屋さんとかでよく研究者の方々と顔を合わせます。普通にいろいろ教わってるうちは良いのだけれど、研究者の方々、どんどん熱くなって難しい訳のわからない話をしだすの・・・自分にもっと理解力があればねぇ・・・・凸!

No title

むにゅさん、見学に行かれたのですね。
世界の最先端の技術が身近にあるなんて!
やっと、スプリング8とXFELを組み合わせて目標の性能を得る実験も秒読み段階に入ったみたいです。
今、この施設を使って実験をしたいという研究機関から案をつのって、いよいよ今年度中から実験開始みたいですよ。
これでフル回転で実験ができますよね。
研究者の方々はこれだけすごい装置で働かれているから、さぞかし情熱とプライドがあるのでしょうね。だから説明に熱がこもるのもわかります。
こういう仕事が出来るなんて、素敵ですね!
ポチありがとうございます。
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